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俳優、石田延之こと鏡京太郎が綴る36年間、鏡の中に封印してきた想いと未来を綴るぺーじ。
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現世ではどの位の時が経っているのだろうか。

時のエネルギーを感じない闇の空間を嶋は彷徨よっていた。

 闇の空間は、そのもの自体が暗渠の中を流れる水のように感じられた。嶋はその流れの中にあった。
流されるように進んでいるだけのようであった。どこかで、自分の意志ではなくただ、流されているような気分…

「!」

 フト、自分の身体を見ると、嶋の肉体はそこには無かった。つまり、肉体は闇に浄化されたか、溶け込んでしまいそこには無く、意識だけが暗渠の中を彷徨っている…そんな感じだった。 

―この感覚はどこかで体験した事がある・・・。

そうだ! 死んだと思った自分が、吸い込まれるように鏡の中に入った時もこの様な感じだった!―

嶋が初めて古代鏡に吸い込まれた時、あの時はただ慌ててしまい分からなかったのだが、まさにその時の妙な感覚がまざまざと蘇ってきた。

肉体がないといっても、それは目に見えないだけのことなのかもしれない。何故なら、感覚はそこに自分の五体を、爪の先から指まで、存在するという感覚は明らかにあるのだ。
この得体のしれない感覚に身体を…否、意識を慣らさなくてはいけない。

後ろに視線を移してみた…
それは肉体のない嶋にとっては、意識を後ろに移動させた…といったほうがいいかもしれない。

そこには光の球が乱舞する光景が見えた

 時も無く、圧縮された世界には現世のような距離というものも無い、空間そのものが平面なのであろう。

その時、暗黒の空間が歪み始め、嶋の意識の前にメラメラと炎のように揺らぐ物体が現れた。そしてその物体は、嶋の意識の中に入り込んできた。
容易に…するりと。

 それは、突然の出来事であった。

 一瞬意識が空白になり、また徐々に暗黒の闇が嶋の意識をつつんで行く。

―何だったんだあれは!―

 と、暗黒の中に一縷の光が現れた。

―あれは! 出口か?! もしかして過去に!?

 その光の点は、見る見る波紋の揺らぐ空洞になって行く。色鮮やかな光彩が大きく円を描く、その光景に一瞬、嶋は子供のころ夢中になって見ていた特撮番組を想い出していた。
その前で嶋は立ち止まった。

光彩の彼方…暗黒のその先に視線を向ける=意識を送ると、やはり合わせ鏡をしたように点々と無限大に波紋の揺らぐ空洞は続いていた。

 嶋は、目の前にある空洞を覗き込んだ。 どこか見覚えのある光景であった。

「此処だ!この部屋だ!!」

 そこは確かに、古代鏡を置いてあった部屋であった。つまり嶋の部屋ということだ。

「とうとう出口を見つけたぞ!! これで現世に帰れる!」

 嶋が、逸る心を押さえ波紋の揺らぐ穴に意識を集中した時だった。

 穴の向こうに人影を感じた。誰かが鏡の前に近寄って来る。

「!!?」

 鏡の前に男が一人現れた。それは…

つづく

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 現在、発売中の『さよならミラーマン』の86頁ー当時の制作主任、設楽氏と助監督、北村氏の対談において以下の件~ ”~志村さんは、下に優しく上には厳しい人なんです。絶対お世辞を言わない、珍しい人でした。損と言えば損ですよね。世渡りベタというか。あ、この人も出世しない人だ(笑)。*(山浦さんとの対談参照)  とあります。これは脚本家の山浦弘靖氏との対談において設定上「出世しない人」という言葉があり、それにリンクするものとして捉えておりましたが、86頁においてもスタッフ思いであり、スタッフの為に上にも媚を売らない凛とした性格ーそれ故にスポンサーなど上とはぶつかることも多く、才能があるのに出世はしずらいー という意味として対談時の通り記述させていただきました。  ですが、とらえようによっては誤解を招く文章でもありますし、また発言者となった北村氏にもご迷惑をかけかねない要素も含まれておりますので、ここに弁明並びに不用意な文法となったことをお詫び申し上げます。また、この文章を読まれて御不快に思われた方には、真意は異なるということと、不用意な文法である点に関してお詫びを申し上げるとともに、ご理解賜りたくここに敢えて記載させていただきます。 株式会社大洋図書  「さよならミラーマン」編集スタッフ一同
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