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現実世界へ出ようと鏡に向かった嶋。
だが、嶋の体は跳ね返され出る事が出来ない。
「何故だ!どうして出る事が出来ないんだ!」
振り返ると、光の乱舞する先の暗黒の中にある鏡の世界への出入口が崩れ、消えて行くのが目に飛び込んで来た。
「!!」
別の窓枠を見ると、駅のホームに置かれていた鏡なのであろうか、そこから見えたのは崩壊した構内の光景であった。ホームの屋根は崩れ落ち、線路は飴のように曲がり、その横に電車が横倒しに脱線していた。
「地震だ!地震があったんだ!!・・・そうか! 地震のために鏡が・・・・・!」
地震によって現世と鏡の世界への架け橋であった古代鏡が壊れてしまったのだ。
このままでは、嶋は永久に時の無い世界から出られないのだ。
状況を把握すると同時に、不安と恐怖とが嶋の心臓を締め上げた。
窓枠を見ると、機内に取り付けられた鏡から、嶋の状況がわかっているのか、勝ち誇った笑みを浮かべた雪村がこちらを見ている姿が映っている。
この地震も、もしかしたら雪村が成した現象だったのではないのか?
そう思うと今すぐにでも、機内に飛び移りたかった。雪村さえ倒せばこのお現象が収まるような気がした。
しかし、外の景色は見えても、鏡の表面は今までとは違って冷たく、そして硬かった。頑なに嶋を拒んでいるかのようだった。
「くそっ! どうすれば…、どうすれば出られるのだ!」
恐怖と絶望感の中で、あるともわからぬ出口を求め、嶋はその場を離れた。
閉じ込められたのは今しがたであるのに、現世ではどの位の時が経っているのであろうか、時折見る窓枠には嶋が今まで見た事も無いような新型の車や人々のファッションが映し出されている。
おそらく現世では限りない時が流れているのだ。一つの窓と窓の間の何歩かが、あっという間に数十年をひとまたぎにしているのかもしれない。
何年、何十年先でもいい…どこかに出られる窓が、鏡がないものか…?嶋はあてどもなく歩き続けた。
しばらく歩いていくうちに、嶋は一つの窓枠に目を取られた。
そのガラスの窓枠に映し出されていたのは、ベッドに横たわり臨終を待つ老人の姿であった。
「…!」
よく見ると、それは老いた自分の姿であった。
「あれは、俺だ!…と云う事は…、出られる! 俺は現世に戻れるんだ!」
嶋の心に光明がさした。
「だが、どこに出口が…」
嶋は、辺りを見回した。
そこには薄い層の壁が、合わせ鏡をしたように幾重にも無限に広がっていた
「待てよ!この世界は明と暗に二分されている。明は、現在から未来へと続いている…、と云う事は・・・。暗の世界は過去へ続いていると云うか!?」
言うや嶋は、脱兎の如くオーロラの壁を抜け出した。時の無い世界では、オーロラの壁を抜け出るのに時間はかからなかった。
オーロラの壁の外に立ち、嶋は光の球が乱舞する先に広がる暗黒の空間を見据えた。
「必ずこの先に出口があるはず・・・!」
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